データマネジメント(DM: Data Management)

データマネジメント部門(DM)のお仕事について紹介します。

  • 未経験者採用:
  • キャリアの幅:
  • 平均的な年収:

データマネジメントのお仕事紹介

臨床試験では、膨大なデータが日々医療機関や被験者から収集されます。そのデータを正確に管理・整備し、解析・申請に耐える「信頼できるデータ」に仕上げるのが、データマネジメント(DM)の仕事です。

データマネジメントは、Clinical Data Manager(CDM)やClinical Data Science(CDS)と呼ばれることもあります。電子データ収集(EDC)の設計、データクリーニング、クエリ管理、コーディング、規制対応まで、試験データの品質・一貫性・トレーサビリティを守る“臨床データの番人”とも言えます。

データマネジメントはどんなお仕事?

データマネジメントは、臨床試験で収集されるすべてのデータについて、「設計・収集・精査・提供」のサイクルを回す役割を担います。

主な業務には以下があります:

  • データマネジメント計画書(DMP:Data Management Plan)の作成
  • CRF(Case Report Form、症例報告書)の設計・改訂
  • EDC(電子的症例報告システム)の構築と仕様定義
  • データクリーニング/クエリ設計・管理
  • コーディング(MedDRA/WHO-DDなど)の適用と検証
  • データベースロック(DBL)に向けた品質チェック
  • CDISC(SDTM/ADaM)対応データセット構築に向けた前工程支援

さらに近年では、RBM(Risk-Based Monitoring)やCentral Monitoringの視点から、試験中のデータ傾向をリアルタイムでモニタリングし、異常を検知・可視化する支援役としても注目されています。

データマネジメントはどんな役割?

データマネジメントは、臨床試験データの信頼性を担保する“品質管理の中核”です。

  • 試験開始前:どのデータを、どう収集し、どう確認すべきかを定義
  • 試験実施中:想定と異なる入力・欠損・矛盾を見抜き、必要に応じて現場と連携
  • 試験終了後:解析可能なデータとして統計部門に受け渡す

また、近年の役割変化として、RBMの中での“データトリガー”設計(例:重大な逸脱やリスク検出を自動化するためのルール定義)や、Central Monitoring部門と連携して現場介入の優先度を助言する立場にもなっています。

データマネジメントの成果物は?

データマネジメントが作成する成果物には以下のようなものがあります:

  • データマネジメント計画書(DMP)
  • CRF/eCRF設計仕様書
  • データベース仕様書(DBS)
  • クエリ発行ルール/データクリーニングログ
  • コーディング仕様書、標準用語辞書(MedDRA, WHO-DD等)
  • モニタリングや統計解析との連携に向けたデータ仕様共有文書

いずれも監査やPMDA/FDA等の審査対応上、改ざん・誤認のない整備とバージョン管理が求められます。

データマネジメントに向いている人

DM職には以下のような特性が活かされます:

  • 細かい矛盾や不整合に気づく“注意深さ”
  • データ構造や収集ロジックを理解する“論理的思考力”
  • 現場・CRO・統計チームと調整できる“対人コミュニケーション力”
  • 規制や標準(GCP、CDISC)に準拠する“ドキュメンテーション力”
  • 海外CROやGlobal Studyで必要となる“実用的な英語力”

単なる“裏方”ではなく、データ戦略のパートナーとしての主体性が強く求められる仕事です。

コミュニケーション能力

データマネジメントは、様々な部門と協働しながら、データという共通の基盤を整えます。

  • CRA/モニター:入力エラーや再調査が必要なデータについて連携
  • 統計解析担当:解析前に必要な構造・仕様の共有
  • EDC開発者:仕様漏れ・改修の確認と調整
  • 医療機関:クエリ対応の進捗確認とデータの再提出依頼
  • 薬事/QA部門:申請対応や監査前整備における相談窓口

クエリの発行そのものはEDC内の自動ルールに基づきますが、その設計と最終確認はDMの責任領域です。

“データの守護者”から“戦略の立役者”へ

従来、データマネジメントは“集まったデータの品質を担保する”後方支援の色が濃い職種でした。しかし現在では、試験設計段階からRBM・中央モニタリング戦略に関わり、リスクの早期検知と介入優先度設定に寄与する役割が期待されています。

さらに、CDISC準拠のデータ構造や自動モニタリングツールの前提設計など、統計・薬事・ITの境界領域に立つ実務者としても重宝されるポジションです。

データマネジャーになるには?

データマネジメント職に就くためには、以下のような経験やスキルが求められます:

  • 理系学部(生物・統計・情報科学など)出身者が多い
  • EDCベンダーやCROでのシステム構築・入力支援からキャリア開始する人も多い
  • ITスキル(Excel, SQL, SAS)、GCPやCDISCの基礎知識があると強い
  • 英語力(TOEIC 650点以上程度)があるとGlobal Study対応で優位

実務経験を積めば、3〜5年でリーダー/クロスファンクショナル案件対応も可能です。

データマネジメントのキャリアプラン

データマネジェーのキャリアパスには、以下のような選択肢があります

  • シニアDM/マネージャーとして複数試験の統括や外注管理
  • RBM/Central Monitoring領域の専門家として設計・教育・システム運用に関与
  • データ標準化/CDISC推進チームとして薬事申請品質向上に貢献
  • 開発業務企画やオペレーション改善領域へ横展開

統計やモニタリング、IT部門との“橋渡し人材”として、多様なキャリアの展望がひらけます。

まとめ

データマネジメントは、単なる「データの整備係」ではなく、臨床開発の品質とスピードを支える構造設計者であり、RBMやCDISCなどの高度化する戦略の実行者でもあります。

細やかな管理能力と、広い開発理解、そして周囲と連携する調整力を備えたDMは、今や“裏方”ではなく“前線”の職種。グローバル対応やデータ主導の開発が進む中、その価値はますます高まっています。